装具の大分類

装具は体幹・上肢・下肢に大きく分類されます。更に上肢および下肢装具では、どの関節を含むかによって細かく分けられます。体幹では脊椎の保持部分によって分類。以下は、A.A.O.S.(American Academy of Orthopadeic Surgeons) による分類法であり、定義はJIS 用語によります。

(1)体幹装具
①仙腸装具・・・骨盤を包み、仙腸関節の動きを制限する装具の総称。硬性 ・ 軟性 ・ 骨盤ベルト ・ 仙腸ベルト など。

②腰仙椎装具・・・骨盤から腰部におよび、腰椎と仙腸関節の動きを制限する装具の総称。軟性 ・ ナイト型 ・ ウィリアムス型 ・ チェアバック型 など。

③胸腰仙椎装具・・・骨盤から胸背部におよび、胸椎・腰椎・仙腸関節の動きを制限する装具の総称。
軟性 ・ モールドジャケット式 ・ ジュエット型 ・ テーラー型 ・ ナイトテーラー型 ・ スタインドラー型 など。

④頸椎装具・・・肩甲骨から頭蓋に及び、頸椎の動きを制限する装具の総称。カラー ・ 支柱付き ・ モールド式 など。

⑤頸胸椎装具・・・胸郭より頭蓋骨に及び、頸椎と胸椎の動きを制限する装具の総称。ハロー式 など。

⑥側湾症装具・・・側湾症の矯正装具の総称。ミルウォーキー型 ・ アンダーアーム型 など。

腰椎装具(腰椎用軟性コルセット)
一般にダーメンコルセットと呼ばれるものです。
ダーメンとはドイツ語で女性を指します。
女性用のコルセットが医療用に進化しました。


胸椎装具(胸腰椎軟性コルセット)
骨盤から胸までのコルセットです。          
胸椎の圧迫骨折の治療などに処方されます。

頸椎装具(頸胸椎装具 モールド式)
頸椎を保持する装具です。 
採型にて、ご本人のお身体に合わせています。

側弯症装具
側弯症矯正装具のアンダーアーム型です。

(2)上肢装具
①指装具・・・IP屈曲補助装具 ・ IP伸展補助装具(コイルスプリング式、針金わく式)・ 指固定装具 など。

②MP伸展・屈曲補助装具・・・MP関節に伸展拘縮などがある場合に用いる装具。中手骨と基節骨・中節骨との背側面に当てる金属プレートと第2~5中手骨頭掌側面を横切る手掌バーを鋼線でつなぎ、このプレート間をゴムバンドなどで牽引してMP関節を屈曲させる(JIS 用語)。

③手関節固定装具・・・プラットホーム型 ・ サンドイッチ型 ・ パンケーキ型 など。

④対立装具・・・母指を他の4指と対立位に保持するために用いる装具(JIS 用語)。短対立装具 ・ 長対立装具 など。

⑤手関節装具・・・手関節の運動を制御する装具の総称(JIS 用語)。
カックアップスプリント ・ トーマス型懸垂装具 ・ オッペンハイマー型装具 ・ 手関節背屈装具 ・ 手関節背側支持装具 など。

⑥肥持装具・・・母指・指に筋力低下のある場合に母指を対立位に保持し、第2・3指を金属枠で固定。この3指で3点つまみを行う装具(JIS 用語)。
指駆動式 ・ 手関節駆動式 ・ つめ車式 ・ 肩駆動式 ・ 体外力源式 など。

⑦肘装具・・・肘関節の動作を制御する装具の総称(JIS 用語)。両側支柱 ・ 硬性 ・ 軟性 ・ 固定装具 ・ 体外力源式 など。

⑧肩装具・・・肩関節の動作を制御する装具の総称(JIS 用語)。肩外転装具 ・ 肩甲骨保持装具 ・ 機能的上肢装具 ・ 腕つり ・ BFO ・ 懸垂装具 など。

前腕装具(手関節装具)カックアップスプリント
手関節を背屈位に保持します。

肘装具(硬性)
肘関節の硬縮に処方。ターンバックルによって他動的に肘の伸展、屈曲を行います。

肘装具(硬性)
タウメル継手使用。上記肘装具と用途は同じです。

ターンバックルがなく、ダイヤルを回すことによって伸展・屈曲を行います。

上腕ファンクショナルブレース
上腕骨の骨折時に処方される装具です。

上腕ファンショナルブレース(前腕付)
骨折部位が遠位(肘に近いところ)の場合、肘関節へ制動を持たせたい時に処方。
肘関節にプラスチック継手を使用しました。

(3)下肢装具
①足装具・・・足部の生理的弯曲、疼痛除去等のために用いる装具の総称。ただし、靴を除く(JIS 用語)。靴インサート ・ ふまず支え。

②整形靴(靴型装具)・・・医師の処方にもとずき、変形の矯正や疼痛のない圧力分散など特定の目的で患者様の足部に適合させた靴。
木型を基本に製作し製甲のついたもの(JIS 用語)。短靴 ・ チャッカ靴 ・ 半長靴 ・ 長靴 (中足骨パッド、ウェッジ、靴の補高)など。
corrective shoes,orthopedic:内反、外反、扁平足などの変形矯正に使用する矯正靴。
orthopedic shoes:高度の病的変形を代償して疼痛のない圧力分布と、障害が目立たないように補正を行った整形外科靴を含む。

③短下肢装具・・・下肢装具の中で下腿部より足部に及び、足関節の動きを制御するもの。
両側支柱付き ・ 片側支柱付き ・ らせん状支柱付き ・ 後方板ばね支柱付き ・ PTB短下肢装具
プラスチック短下肢装具 ・ プラスチック製靴インサート付き など。

④膝装具・・・大腿から下腿に及ぶ構造をもち、膝関節の動きを制御する装具(JIS 用語)。
両側支柱付き膝装具 ・ プラスチック硬性膝装具 ・ スウェーデン式 ・ 軟性 など。

⑤長下肢装具・・・下肢装具のうち、大腿部より足底に及ぶもの。膝関節と足関節との動きを制御するもの(JIS 用語)。
両側支柱付き ・ 片側支柱付き ・ 坐骨支持 ・ 機能的長下肢装具(UCLA式) ・ プラスチック長下肢装具 など。

⑥股装具・・・下肢装具のうち、骨盤から大腿部に及ぶ構造。股関節の動きを制御するもの(JIS 用語)。股内、外転装具(蝶番式)。
ペルテス病装具:トロント型 ・ トライラテラルソケット型 ・ ポーゴスチック型 など。
先股脱装具:リーメンビューゲル型 ・ フォンローゼン型 ・ バチェラー型 ・ ローレンツ型 ・ ランゲ型 など。


足底装具(軟性)
外反母趾などで処方。縦と横アーチを補正。靴の中に入れて使用していただきます。

足底装具(硬性)
踵骨々折で踵骨を免荷させるために処方。踵が完全に露出されます。

足底装具(ランゲ型)
縦、横アーチの補正や踵骨の骨折治療時に処方。プラスチックで製作します。

靴型装具 半長靴(特殊靴)
足の変形が強い方に製作します。

短下肢装具 プラスチック製SHB(靴べら式短下肢装具:シュウホーンブレース)
脳血管障害の後遺症などで麻痺側に装着。足首の角度、プラスチックの厚みなどは医師により処方されます。

短下肢装具 ジョイント付きプラスチック製 オクラホマジョイント
足首が背屈しやすいように足継手を持つ装具。底屈方向(足が下がらないように)は、後面にダンパーを取り付けます。
階段など昇降の多い所を歩かれる方には喜ばれますが、リハビリが必要となります。

ジョイント付きプラスチック製短下肢装具 タマラックジョイント
ジョイントの種類は違いますが、おおよそ上記の装具と同じです。

こちらは、靴を履いた状態です。

P.D.C アンクルジョイント付きプラスチック製短下肢装具
継手に底・背屈制動ができるWクレンザックの機能を持っています。

両側支柱付き短下肢装具
一般にSLB靴型と呼ばれているもの。この装具には靴型装具が付いていて、オーダーメイドで製作されます。


こちらは足部覆い(皮革大)式で屋内専用となります。つま先は開口しているので足先は露出。
内反や緊張の高い人には下の足部モールド式よりは適応させやすいとの一説あり。

両側支柱付き短下肢装具 足部モールドタイプ
上記の装具足部がプラスチック製になったもの。
屋内外兼用となりますが、屋外用として使用する場合はオーバーシューズ(市販のリハビリシューズ)が必要となります。

トーマス式 PTB支持式短下肢装具(硬性)
下腿骨の骨折などで処方。パテラ(膝蓋骨)で体重を支持して、足は宙に浮いている状態です。
両足が同じ高さでないと歩行が困難のため、健足にも靴の補高が付きます。

靴型装具付きPTB支持式短下肢装具(硬性)
上記のトーマス式と同じように下腿骨の骨折などで処方されますが、屋内では使用が困難な装具です。

荷重調節付きPTB支持式短下肢装具(硬性)
上記のトーマス式、PTB支持式と同様の目的で処方。足底に掛かる荷重を任意的に調整できます。

足部モールド式 PTB支持式短下肢装具(硬性)
こちらは足関節フリージョイントですが、可動域を調整したい場合はWクレンザック等に変更して製作。
足部内側の補高は取り外し可能です。最初は抜いておいて治療の段階で荷重をかけていく場合に挿入します。

SHB式 PTB支持式短下肢装具(硬性)
歩行あぶみを取り外すことでより大きい荷重が掛けられます。足関節は固定。
上記の足部モールド式装具同様、足部内側に補高が挿入されています。

短下肢装具 補高用装具
大きな脚長差を生じた場合に処方される義足の足部付き装具。ご自分の好きな靴を選べることが利点です。

こちらは室内で使用する足部覆い型の装具です。屋外では靴の歩行が必要になるので、屋内外各1つずつ必要になります。

膝装具(硬性)
変形性膝関節症などに処方されます。

両側支柱付き膝装具(硬性)
膝の角度が任意に変えられるように、膝関節にダイヤルロックという継手を用いています。
靭帯損傷や膝蓋骨の骨折、膝内骨折などに処方されます。

リガメント用膝装具(硬性)
膝の靭帯損傷の治療に処方。
こちらは前十字靭帯損傷用でフルオーダーにて製作したものです。

膝装具(軟性)

膝継手が付いているので膝の曲げ伸ばしが可能。
こちらはオーダーメイドで製作したものです。

長下肢装具 坐骨免荷式(硬性)
こちらは坐骨支持式(トーマス型)の装具です。
主に大腿骨の骨折時治療に処方されます。

両側支柱付き長下肢装具 坐骨支持式(硬性)
小児麻痺の方などに処方。膝当てが付いていて、膝が折れるのを防いでいます。
屋内でも装着しますので、外出の時には装具の上から靴を履いていただきます。


両側支柱付き長下肢装具(セミロングタイプ)
脳血管障害の患者さんなどに処方。
屋内と外で使っていただく為、外出の時にはこの上に靴を履いていただきます。
大腿部が取り外せますので、短下肢装具への移行が可能です。

こちらの下腿部はシュウホーン(靴べら式プラスチック製)になっています。
麻痺の軽い患者さんに処方されます。

股装具 骨盤帯付長下肢装具 坐骨支持式 (硬性)
股関節に疾患がある方に処方。股継手は固定、遊動の選択が可能です。

先天性股関節脱臼用装具 リーメンビューゲル
赤ちゃん自身の足をける運動にて脱臼が自然に整復される装具。
チェコスロヴァキアのDr.Pavlik考案。別名パブリック帯。

JIS用語
日本産業規格(JIS=Japanese Industrial Standardsの略)。日本の産業製品に関する規格や測定法などが定められた日本の国家規格のこと。